これからの子宮頸がん検診
「HPV検査」と「細胞診」の違い
2023年4月、厚生労働省は市区町村による子宮頸がん検診に「HPV検査」を新たに導入しました。これにより、今後は各自治体が従来の「細胞診」または「HPV検査」のいずれかを選んで実施することになります。これらの検査方法の違いについて詳しく見ていきましょう。
子宮頸がんの原因はHPV感染子宮頸がんは、主にヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因で発症します。HPVは性行為によって感染する一般的なウイルスで、多くの人が一生のうちに一度は感染することがあるとされています。子宮頸がんのほか、咽頭がんや肛門がんなどとも関連があるため、予防のためには定期的な検査が重要です。
HPV感染からがんに至るプロセスHPV感染は一時的なものであることが多く、多くの場合は免疫力により1~2年以内に自然に排除されます。しかし、約10%のケースでウイルスが体内に残り続ける持続感染となり、そのうちの一部で細胞に異常が現れることがあります。異常が進行すると「異形成」というがんの前段階(前がん病変)になる場合がありますが、これも自然治癒する場合があり、実際にがんへ進行するのはごくわずかです。がんになるまでには数年から十数年かかるとされるため、定期的な検診で異形成の段階で発見し、早期に対処することが理想的です。
従来の「細胞診」と新たに導入された「HPV検査」の違いこれまで各市町村は、20歳以上の女性を対象に2年ごとに「子宮頸部細胞診」が行われていました。細胞診は、子宮頸部の細胞を採取して顕微鏡で異常な細胞を確認する方法です。一方、今回新たに導入された「HPV検査単独法」は、30歳から60歳を対象に5年ごとに実施され、採取した細胞からハイリスク型HPV感染の有無を調べます。HPV陽性の場合のみ追加で同一検体による細胞診を行い、異常が見られた場合は精密検査、問題がなければ1年後の追跡検査を行います。
HPV検査単独法のメリットは、がんのリスクがある人を早期に特定し、追跡管理することで早期発見につながることです。また、検査間隔が長くなるため、受診の負担軽減と受診率の向上も期待されています。国のガイドラインでは、細胞診単独法とHPV検査単独法のどちらも同等の効果があると認められており、どちらも推奨されています。
今後は、各自治体がどちらの検査方法を選択するかに応じて、30歳以上の女性には細胞診またはHPV検査のいずれかが実施される予定です。また、20歳から30歳未満の女性には引き続き細胞診が行われます。検診の内容や費用、時期については各市区町村のホームページや広報で確認できます。 基本的には市町村の検診を活用して、ご自身の健康維持に努めてくださいね。
※当検査室では、高精度なPCR法によるHPV検査を実施しておりますのでご利用をお待ちしております。